レンが来ない。

ミハシんチに聞きに行こうかとも思ったけど やめた。
さいきんミハシはオレを見ると イヤな顔をする。
前からきらわれてたと思うけど オレがレンと遊ぶようになってから とくにたいどで表すようになった。
でも それまで逃げてばっかだったミハシが レンと一緒のときには オレに立ち向かう。
レンが大事でしかたがないと ふるえた足が言っていた。
レンが好きでゆずれないと きつくにらんだ目が言っていた。

そんなミハシを前にすると オレはかなしくなる。

オレだって レンが大事なんだ 好きなんだ 待っているんだ どうしようもないんだ

でもそんなことは言えなくて いつでもただうばって逃げる。
ひっぱれば レンはオレについてきてくれるから それでいいと思ってた。
取り残されたミハシが いつもどんな顔でいたかなんてこと 気づけなかった。

ミハシんチに行くこともできなくて オレは待つことしかできなくて。
イライラする。
イライラして寄っかかっていたベッドに 作った拳を叩き付ける。
ボフンという間の抜けたにぶい音は 手のしょうげきは吸収したけど なんだかバカにされたようで 返って腹が立った。
もう一度手を振り上げたけど 振り下ろす前に さっき叩いたはずみでベッドから何かが転がった。

昨日レンが来るのを楽しみにして 握ったまま寝てしまった白いゴムボールだった。
床に転がったボールへ 手を伸ばす。
拾い上げたゴムボールを かべに向かって軽く投げた。
トテントテンと音をたてて かべに当たったボールがワンバウンドして 手の中に返ってくる。 
このボールみたいに レンもただまっすぐに オレのところへ 帰ってくればいいのに。
そう思ったら 少し泣きたくなった。
でも泣くのは ダメだ。
オレは泣かないからオマエも泣くな ってレンと約束した。
それでも レンはよく泣くけれど。

泣きたい気分をまぎらわすために ひたすら かべに向かってボールを投げる。

くりかえしくりかえししているうちに だんだん眠くなってきた。
オレは 待ちくたびれてしまった。

レンに会いたい。



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