今日勇気を出して、阿部くんのクラスに遊びに行った。
ドアから覗いてみたら、阿部くん後ろを向いてて、なんとなく声をかけられなかった。
どうしようかと、思ってたら、クルって阿部くんが振り向いて。
まっすぐにこっちを見てくれたから、オレ、嬉しくて!
けど、目があったとき、驚いて、固まっちゃった。頭と身体が一緒に停止したのが自分でもよくわかった。
だって、だって、阿部くん、メガネしてたんだ!!
それは、フイウチで。
オレは、なんだか、胸の真ん中へんが、きゅうってした、んだ。
気づいたら、全速力で廊下を走ってた。
自分のクラスに戻って席についたけど、心臓がバクバクいってて、口から飛び出そうだった。
それは、たぶん走ったからだけじゃなくて。
そのあとの授業はいつもより何が何だかわからなかった。
阿部くんは困ったひとだ。
当番:三橋廉・田島悠一郎
「三橋ー!部誌書けたか?」
鉛筆を置くと、田島が声を掛けてくれた。
「う、うん!書けたよ!置いてくる、ね」
「俺も一緒に行く!」
「え」
言葉の意味がわからず、瞬きをする。
田島は、ニッと笑って続ける。
「だって今週俺らが当番だろ〜」
「ウヒ。あ、アリガト」
こんな風に誰かが自分を待っていてくれることが嬉しくて、自然と口元が綻ぶ。
「三橋、部誌書けたの?俺、シガポに用があるから、ついでに置いてきてやるよ」
さらに、着替えていた栄口が声を掛けてくれた。
「え、えええー!いいの?」
栄口の言葉に、心底驚く。
「え?うん、ついでだし」
(栄口くんはいいひとだっ〜〜)
栄口のように、さらっとひとに親切にできるというのは、本当に凄いことだと思う。
差し出された手に、そっと部誌を渡す。
「中見てもいい?」
「う、うん。あ、栄口くん!ありがとう!!」
「いーえ、どういたしまして。じゃーな」
「おーサンキュー!栄口!じゃあ、帰ろうぜー三橋」
「う、ん!ばいばい、栄口くん!」
栄口と別れて、田島と並んで廊下を歩く。
(今日は、いっぱいいいことがあった、ぞ)
あとは、ボールを投げられたら良かったのに。
欲張りなことを考えながら、雨を落とす空を恨めしく見上げた。
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急にどんが描き出した、不意にメガネな阿部くん絵を見て妄想した話。
と説明しなければ、何が何だか分からない話。
説明しても微妙…
でも続いたり…
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