※あろうことか叶誕を寝過ごして迎えて大ピンチだったところに、どんが4つの質問を用意してくれました。
手っ取り早く祝えるようにとの心遣いありがとう、一問一答は難しかったので、文で誤魔化しました…。
ログサルベージにあたりほんの少し加筆修正あり。
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(Q1.プレゼントが届きました。誰からですか?)
学校から帰宅し、家のドアを開けたら、台所から母親の声がした。
おかえりなさい!
「修悟、何か荷物が届いてるわよ」
ちょうど上がりかまちにドンと置かれた箱に、行く手を遮られたところだった。
確かに、オレ宛の荷物だった。
差出人の名前はない。
けど、怪しいなんて思うよりも先に、宛名を書いた筆跡に見覚えがあった。
廉だ!
誕生日を覚えていてくれたのかと、浮かれた。
(Q2.プレゼントは何でしたか?)
狭い玄関先で広げるわけにもいかず、二階の自室へ運ぼうとダンボールを持ち上げた。
大きさの割にそれほど重くはない。早く中身が見たくて、階段を上るのさえもどかしい。
部屋に入ってすぐに大きな箱をバリバリと開ける。
随分でかい箱だけど、中身はなんだろう。
中から出てきたのは、
スポーツタオルと帽子とリストバンドとアイシングローションとTシャツとCD。
(Q3.もらった感想は?)
なんだこれ。
つうか、まぎれもなく廉だ。
金のかけかたと気の遣いかたが尋常じゃない。
どうせ何にしようか迷っていっそ全部買っちゃえ、とでも考えたんだろう。
それでも廉にしてみれば決して投げやりにではなく、真剣に悩んで迷って何が喜んでもらえるのかわからなくて不安で、
でも時間がなくなって焦って、片っぱしから全部買っちまったんだろう。
それくらいのことはわかってる。
わかってるのに。
なんで廉にはわかんないんだろう。
たくさんのプレゼントより、例えば、廉が電話をくれたら。
廉の声が聴けたら。
そっちのほうが何倍も嬉しいんだってことくらい、なんでわかんないのかな。
迷ったのなら訊いてくれればよかったのに。
廉がオレのことを考えてくれたのは嬉しい。
このラインナップで、かなり浮いてるCDは、まえに、オレが好きだと言ったグループのCDだ。
ちょっと言っただけのことをちゃんと覚えていてくれたことは嬉しい。
オレのためにプレゼントを選んでくれたのは嬉しい。
けど、廉、選べてないじゃん。
廉は自分には無頓着なくせに他人にはとても臆病だ。
その線引きがせつない。
おまえが作るその距離が苦しい。
オレに対してくらいもっと近づいてくれてもいいのに。
箱の一番下に、ノートの切れ端のような紙切れが入ってた。
―― 叶君 おたんじょうびおめでとう! 三橋廉
急いで書いたのか、ミミズののたくったような字だった。
だけど、こんな紙切れがどれだけ嬉しいか、おまえは知らないだろう。
(Q4.送り主にお礼のメールを書きましょう!)
箱を開ける前は、お礼の電話をしようと思ってたけど、やっぱやめた。
メールにしよう。
廉は、用事のある時くらいしか自分から電話をしない。
廉がオレに用事があることなんて、めったにない。
つまり、廉から電話がかかってくることは、めったにない。
電話をしたいときでも迷惑じゃないか、忙しいんじゃないか、とか余計なことを考えてかけないんだ。
それは、半分はオレの勝手な思い込みだけど。
電話くらい、くれないかな。
誕生日に、これくらいのワガママならきっと許されるだろう。
件名:嬉しかったよ
本文:プレゼントありがとう廉。声が聴きたい 修悟
***
携帯のディスプレイから、送信完了の文字が消えたのと同時に階下から呼ぶ声がした。
「修悟ちょっと来なさい!」
ゆっくりと電話を待つことも許されないらしい。まだ着替えてもしていない。
(ったく、なんだよ)
いつも家ではベッドの上に投げ出しておく携帯を尻ポケットに仕舞う。
下りようとした階段の前で母親の催促の声が飛んだ。
「シューゴ!!」
「いま行くって!!なんだよ?!」
普段あまり人を急かすことのない母が珍しいなと思いつつ、早足で下りた階段の先、
さっき荷物が置いてあった上がり口に立つ母と閉まっているドアのあいだに幻覚を見た。
「……はあ?」
「しゅ、修ちゃん!お誕生日おめでとう!!」
聴きたかった声が回線を通さずに、ダイレクトに響く。
思いもよらなかった返信に、しばらく立ちつくすことしかできなかった。
「ゴザイマス…」
反応がないことにびくついた廉が視線を泳がせて小さく続けた。
びっくりに遅れて幸せがやってくるのはもう少しあと。
HAPPY BIRTHDAY!! dear 叶修悟
2005.07.12.